僕と先輩と、黄昏で いち




「君は偽物で、どこかに本物の君がいて、そいつはものすごい面倒くさがり屋で、生活だなんてものや、ただの器の癖に重たくて制限だらけのこの身体ってやつを君に押しつけて、どこかのビルの屋上なんかで一日中、雲の裏側に絵を描いて遊んでいるんだとするじゃない?」

「何の話?」

「はい、今、君の目の前に、突然本物の君が現れましたー。そいつはこう言うのよ。気ままな生活もそろそろ飽きた、俺はその身体に戻るから、お前もういいや、ってね」

「ふーん」

「どうする?」

「あー、ちょっと嫌な感じ、かな。生活を取られることがどうこうじゃなくて、今まで僕は僕として、僕なりに生活してきてさ、それをいきなり直角方向からすこーん、て、達磨落としみたいに、そんなのは、ちょっとムカつく」

「君もムカついたりするんだねー」

「うん」

「でもね、本物の君はやっぱり本物の君だから、なんかこう、ペンライトみたいな機械で簡単に君を追い出しちゃって、元の身体を手に入れるんだよ」

「なにそれ」

「いいのーそうなのー。でさ、身体を取られて意識だけになるんだよ君は。ふわふわふわー、ってね。さあ、どうする? どーする?」

「……機械の身体になる、かな」

「私は君のそういうところが好きだよ」

「どうも」

「キスしますか?」

「しません」



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「先輩ならどうするの?」

「私? んー、ふわふわしてるの楽しそうだから、とりあえずふわふわしてるかな。どこかのビルの屋上で」

「……ふわふわ」

「そう、ふわふわ。それに飽きたら、まあ、適当な人の目の前にいきなりばーんと現れて、私は実は本物のあなただから交代しなさいって言って、また適当に暮らすかな」

「飽きるまで?」

「そう、飽きるまで」



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「まだ飽きない?」

「君といるからね」


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