いやそれは無理




たぶん俺は、あんなことはしないだろう。
そんなこともしないだろう。
こんなことをするだろう。
あれはできないだろう。

ひょんなことなら、するかもしれない。
それも、できないだろう。
こうすりゃあ良かった。
そう思うだろう。
それでも俺は、
できないだろう。


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不安な感情を払いのけることができない
比重1.3くらいの空気を吸い込み
吐き出すときには比重1.6くらいかしら?
部屋に溜まっていっちゃう

数ヶ月前には判ってたことが
今はもうわからない
数ヵ月後には判るであろうことが
今はまだわからない


- - - -

深夜
タバコが切れて
コンビニまで買いに行くと
そこがたまたまタバコを取り扱っていない店で
でも何の感情も湧かずに
週刊誌なんか買ってみて
それを自転車の前籠に放り込み
次のコンビニへと向かう

するとKOOLがライター付き二個パック600円で売っており
少し嬉しい
静かな足取りで帰宅すると
五輪の所為でいつもの深夜番組がやっておらず
それでも別にどうということはない
自転車の前籠に週刊誌を忘れたことに気付くが
どうにも面倒であり
さりとてすることもないので
おずおずと取りに行く

昨夜の明け方まで続いた座談会と
今朝からのバイトで寝不足だった頭が
週刊誌を読みながらテレビを見ながらタバコを吸いながら酒を呑む
という行為で覚醒されていく

というのは実は間違いで
頭の神経が擦り切れそうになっているのを
冴えていくのだと勘違いしているのであり
愚かな

気持ちが悪い
気分が優れない
怒っている
全て違うのだ
ただ
なんとなく気に入らない
それだけだと言うておろう
まるで仁丹のよう

ぼんやりと足の指を眺める
その奇形の様を見て
何か衝動に駆られるかと期待したが
擦り切れ間際の頭は何故か
過去に嗅いだ「いい匂い」を何とか思い出すため
鼻腔を進化させようとしている

第一関節を逆に曲げてみる
そういえば昔は
これが奇形だなんて考えもしなかった


- - - -

 デートしたい。
 「寒いから」というのと「気温が低いから」というのは、どう使い分ければいいんだろう?

 そうだよ。
 もう制服デートなんかできないね。
 スーツの袖を合わせて
 シングルノットやらダブルノットやら覚えて
 悪くないかな、悪くはない。

 でもたまに戻りたい。
 なんちゃって。
 意味を求めない。
 添い寝しちゃいたい。
 なんちゃって。

 もう眠ろうよ。
 気温が低いよ。
 自分の体温が温かい。
 なんちゃって。


- - - -

愛を感じなーい 
あんたの原子に愛を感じなーい 
ラブを集めて大人になるのさ 
自分の肩を抱いて 
冷たいベッドに滑り込むのさ 


 ツトム君は魔法学校の三年生。卒業試験の為、人間界にやって来ました。
 そう、ラブを集めて大人になるためです。
「はぁー、なかなか見つからないなぁー」
 おやおや、お困りの様子ですね。
「うん、ラブが見つからないんだー」
 なるほど、ラブですか。
「おじさん、ラブ持ってない?」
 持ってるよ。でも君にあげることはできないねぇ。
「えー。けちー。」
 ははは。でもね、自分のラブは自分で見つけなきゃ。
「えー。けちー。」
 ははははは。
「けーちー。」
 ははははは。
「あはははは。」
 ははははは。

 みんな幸せに暮らしましたとさ。


- - - -

 ああ、どうしよう。
 うかうかしてたら立派な大人になっちゃうよ。

 ああ、どうしよう。
 大人の階段がエスカレーター式だったよ。

 ああ、どうしよう。
 できるだけ、できるだけ、できるだけ。

 できることやったか?
 いっぱいやったか?
 楽しいね。楽しいよ。
 それじゃあ二順目行ってみよう。


 ああ、どうしよう。
 子供のままで遊んでたいけど。

 ああ、どうしよう。
 無理だね。どうも。

 さあ、どうしよう。
 できるだけ、できるだけ、できる限り。

 イベント起こそう。
 参加者募ろう。
 予定を埋めて、
 君も生活過剰。

 ああ、どうしよう。
 その前に、

 ああ、そうだった。
 言っておきたいことがある。

 ああ、どうしよう。
 何だっけ?

 ああ、どうしよう。
 まあいいや。

 お酒を呑もう。
 朝まで語ろう。
 朝まで笑おう。
 そんでたまに泣こう。


 ああ、どうしよう。
 あのこが大人になっちゃうよ。

 ああ、どうしよう。
 さあ、どうしよう。


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 がっかりすりゃいいさ
 見損なっても構わない
 こうなったら死のう、と心に決めている出来事が
 今までずっと起こらなくて
 これからも起こりそうにないだけなのさ


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   「ねぇ、すぐにザオリクかけてあげるからさ、死んでみせてよ」
   「あー……いいよ。」
   「マジ?! やった! 早く! 早く死んで!」
   「でも自分で死ぬのって難しいからさ、殺してよ」
   「いやそれは無理」