シ リ ー ズ ア ラ イ グ マ



 まだ終わったわけじゃない。僕はアライグマになったけれど、まだ終わらせはしない。必ず負ける。でも、だから必死でしがみつくのさ。負けることは問題じゃない。ただ、負けることが死に繋がらないことがこれ以上ない問題。

 飼育員からフォークをくすねた。僕はそのフォークを使ってこの檻から脱走する計画を企てた。計画といってもなんのことはなくて、ただひたすらに掘るだけ。壁だって地球の中心まで続いてるわけじゃないからね。夜中はひたすらに掘りつづけた。そして太陽が昇る頃眠りにつくわけだから、動物園としては勤務怠慢もいいとこだろう。掘り出して二日目に、自分に鋭い爪があるんだからフォークなんか手に入れる必要はなかったと気付いた。それでもムキになってフォークでひたすら掘りつづけた。三日目にフォークが折れた。手で掘った。五日目に飽きた。いつかコンクリートにぶち当たることぐらい、いくらアライグマだからって僕にもわかってたさ。ファッキュー。

 まだ終わったわけじゃない。僕は諦めが悪いんだ。飽きっぽいけど。なんとかしてこの壁の向こう側に行かないと。次の場所に進まないと。いつまでもこんなところでアライグマやってるわけにはいかない。ここは、色々考えすぎる。馬鹿になっちまうよ、まったく。