シ リ ー ズ ア ラ イ グ マ



 地球には60億の人がいるという。つまり、男が30億で女が30億。微妙に女のほうがちと多い。微妙にって言っても、31億と29億ならこりゃもう立派な2億人差。2億人? 昔、「ならもうちっとでも心トキメクことがあってもいいんじゃね?どう組み合わさったってあぶれ出すことはないんだしさ」ってずっと思ってた。正論に思えたし、世界の真理だと思った。世界中の人がこれを知ったら戦争なんて起きないだろと思った。実際、この定理が証明されれば争い事なんてなくなるだろう?脊髄痺れるようなセックスをして、はい、もうしません。一夫多妻や局地集権なんて考えもせずに。

 そこまで話してから、やっと顔を上げる。スポットライトに少し顔をしかめる仕草。
 やあみなさん、こんばんわ。ネバーランドへようこそ。笑い。毎度お馴染みストーリーテラーの○○です。今回のお話は、そんな少年が!ある日なんと!アライグマになっちゃうのです!って、オチ言っちゃったー!オチ言っちゃったー僕!あはははは。・・・ゴホン。さて、言っちゃってからナンなんですが、オチを知っていても心配無用、問題ありません。何故ならこの話の一番の見所は、少年がアライグマになる前のテンワヤンワなんですから。ていうかぶっちゃけ、見所なんて設定されてないんですけどね。僕が一番好きなシーンが、アライグマ以前にあるってだけで。そもそもお話っていうのは、人それぞれにあるんですよ。皆が同じ感じ方をするわけがないし、それじゃつまんない。今貴方の隣りには誰がいますか?友達?恋人?知らないおっさん?あるいは前世で恋人同士だったかもね。たっはー。貴方はこの話を観て、何かを感じるでしょう。でもそれは、決して隣りの誰かと同じものじゃない。貴方の見所を見つけてください。お持ち帰りしちゃってください。そうして貰えることが、お話にとっては至上の喜び、プレジャーだと思うんです。さあ、少し喋りすぎました。飽きた?いやいやいやいやもう始めるからそんな顔すんなよー。とっとと退場した方が良いようですな。でわでわ、本編の始まり始まりー。

 男、しゃがみ込む。暗転。