シ リ ー ズ ア ラ イ グ マ
一瞬だった。タオルが投げ込まれる暇もない。もしかしたら、ゴングすら鳴ってなかったんじゃないかな。よく思い出せないけれど。 元々、各方面にフェティッシュな性癖を発揮しているぼくにとって、あんな髪型はノックアウト必死なんだ。そのことは知ってた?具体的に言うと、編み込みを見ると指を突っ込みたくなる。でもこれって、改めて考えるとただの変態じゃん。指を突っ込みたくなる。突っ込みたくなる。みたくなる。 時間の経過は、かくも酷。何故って、まず、髪の毛伸びるじゃないか。そのうち切っちゃうかもね。そしたら、ほら、ごらん。え、わお!あぁ驚いた。そんな頭のアンタは知らぬ。 細胞はさ、入れ替わっちゃうんだ。重ねた肌だって時間が経てば垢になる。内側には産まれたての細胞Cちゃん。あんた何代目? あの髪だってさ、今も、根元からじくじくと知らない細胞が増えていってるわけ。ぼくの知ってる部分を、どんどん体から遠ざけて。そのうち切られちゃうかもね。そしたら、はい、できあがり。えっと、君は、誰だっけ? 目安が欲しかったんだよね。どの程度入れ替わったのか。独り善がりの思い付きで冗談半分に試してみたんだけれど、生えてくる髪まで茶色がかっていて境界が全然わかんないの。中古品の体だから仕方ないか。ビフォア・ぼく。アフター・ぼく。 タオルは誰が投げ込んでくれるんだろう。 審判は?ノックアウトされてるんだ、試合を止めてくれ。 やっぱり君は似合うけど もう僕はね気にもしないのさ だって ついに現れた 彼女こそが似合うのさ そうさ ついに現れた 彼女こそが似合うのさ (TRICERATOPS/彼女のシニヨン) ところで、ぼくの知ってるアンタじゃなくなるまであとどのくらいかかりますか? もっと新陳代謝を鍛えてください。ね? |