シ リ ー ズ ア ラ イ グ マ



 初恋の話をする。

 僕の初恋は小5か小6で、相手は同じクラスの女の子だった。思うんだけど初恋ってさ、後から自分で決めるもんなんじゃないかな。もしかしたら、僕の初恋は小学校一年生かも知れないわけで、確かに、その頃誰かを想った時期があったような気もする。覚えてないけどね。そう、何にも覚えていない。ただ、その頃そういう対象が居たことは確かなんだよ。あーこんなこと言ってるとそれも自信なくなってきた。

 そう、初恋の話。僕の初恋は中一で、相手は同じクラスの女の子だった。そういえば小学校に入りたての頃、ラブレターを貰ったことがある。幼いながら、そういうことは断片的に覚えてるもんなんだ。電話帳の横に置いてあるようなメモ用紙に「 すきです ○○○○(名前) 」って書いて、郵便受けに突っ込んであったんだ。何にも感想はなかった。それが何処かへ発展するなんてこと、向こうも考えてなかったろうし、僕もそれを貰った場合にするべき行動なんて考えもしなかった。すごく暗いことを言うけれど、あれが、一番純粋な愛の告白だったんじゃないのかな。何も考えずにただ自分の好意を相手に伝えるなんてこと、無理だもの。すてきな事だけど、無理。僕にも、あんたにも。

 でもね、救いは意外なところに用意されている。僕さ、小1の恋よりも、遥か昔にラブレターを貰った相手のことの方がよく覚えてるんだよ。これって結構救いにならない?長い時間を経て自分のことを思い出してくれる人がいるなら、死んだっていいよね。アライグマになったっていい。ほんとだよ。

 でもね、たぶん、ラブレターの彼女は、そんなこと覚えちゃいないと思うんだよね。覚えているのかも知れないけれど、思い出さないでほしい。昔々の話だし、複雑だしね、仕舞っておいてほしいんだよ。その方が、僕の健康に良い。グッド ヘルス フォー ファッキン マイセルフ。

 で、初恋の話だ。僕の初恋は中三で、相手は隣りの隣りのクラスの女の子だった。あれは恋だったのか何だったのか、よくわかんないんだよね。すごく、覚えてない。ただ一つ、覚えているシーンが無茶苦茶強力にやきついて離れないんだわ。でもさ、そういうのって、ある意味一人勝ちだよね。ほんと忘れられないもん。世界に一つだけの花じゃないけど、オンリーワンは結構強いんだよ。にしても、世界に一つだけの花って、あの歌詞はないと思うよ、ほんと。花屋の店先なんだからさ、そりゃあどれもみんな綺麗だよ。綺麗でない花っていうのは、華道者が行くような大型店舗の奥の方に押しやられているのさ。そんで中心の綺麗な花を目立たせるべく周りを微妙に彩るんだよ。その視覚情報を視神経が脳に伝達して、無意識の対比で判断する。蔑んでるけどね、オンリーワンは強いんだぞー。

 さあ、初恋の話だ。僕の初恋は高二で、相手は同じ学校の女の子だった。でもさ、未だに恋ってわかんないよね。例えば、「かわいいな」って思うとそれが恋なのか?なら僕はしょっちゅう恋をしてる。しまくってる。広末もaikoもcharaもソニンも君もかわいいと思うよ。でも、そういうもんじゃないらしい。じゃあなんなんだよ。好感を抱いた時点?「かわいい」って好感じゃないか。好意?同じじゃん。好きって思ったら?それが一番勝手が良くて有効範囲が広くて受け入れられやすい便利な回答だもんね。抱きたいと思ったら?そんなの、言うまでもないじゃないか。つまるところ、恋は恋としか表せない。自分が、「あ、恋した」って思う瞬間ってのは意外と自覚できるもんだ。それだけの議論。

 もそ、初恋の話。
 初恋? ええ、まだですよ。