文字書きさんに100のお題 31-40




031:ベンディングマシーン(自動販売機)

コインを入れてボタンを押せば、ほぼ必ず商品が手に入る。
そういう事態の素晴らしさ
と、もの悲しさ。

利便性はどうしたって同時に悲しみをも生み出す。
生まれてこなくたってよかった悲しみ。
ベンディングマシンのもつエネルギーが
便利さだけでは消費しきれず
漏れだしている
そんな幻想。

自動販売機を前に泣いている人を見たことがない。
その程度。
もう百円玉一枚では
温もりは手に入らないよ。


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032:鍵穴

突っ込んで回せ
回したら抜いてまた突っ込め
鍵があったら開くと思いこんでる?

鍵なら開けてやるけど
中身はいいや

ピッキングを学んだことがあって
相応の道具さえあれば
南京錠くらいなら開けられます
こうしておけば
間違っても開けようだなんて思わないだろ?


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033:白鷺

見たことないから何も浮かばない
リンクが張られていませんの
真っ白なノートを前に絶望してる気分やわ
汚したくないけれど
何か書き込みたいような意識も
少しある


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034:手を繋ぐ

暖かいとか
冷たいとか
色々言われた
この手

居心地が良い手っていうのは
なんだか胡散臭いけれど
確実に存在する

握ってみないと判らないはずなのに
なんとなく確信を持ってみたり
握ることなんてできやしないのに
なんとなく確信を持ってみたり


あんたの指に
キスがしたいよ


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035:髪の長い女

怖い
本人に全く関係のないイメージだけど
なんか怖い
申し訳ない

髪に魅力を感じたことってほとんどないんだ
ごめん

魅力を感じない、っていう状態は
そりゃどう考えたって悪いのは
対象じゃなくて
それに魅力を感じることの出来ない本人が
劣っている、損をしているのであり
魅力を感じるだなんていうのは
すごいいいことで
感じることの出来た自分が嬉しい
だなんて感情すら持てるようにもなるのだけれど
ごめん

うなじやくちびるにも魅力を感じたことがない
まつげや歯並びにも

損してるのは少し悲しいけれど
それを補い余る魅力の感じ方をしているので
そんなに問題でもなかったり

でも怖い
ごめん


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036:きょうだい(変換自由)

京大には行けません
強大なものがありません
鏡台には興味がありません
兄弟にも興味がもてません


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037:スカート

上履きの隠し合いとか
消しカスの投げ合いとか
滑り台での高オニとか
猫の真似とか

ある日スカートを履いてきた君は
ジャングルジムから飛び降りて
派手にパンツを丸出しにした後
よくわからない理由を言いながら走り去ったっけ

「スカートやと遊べへんの!
 わかった?!」

と叫んだ君は
あたかも僕らにそれを言い聞かせようとしているふうに見えたが
僕は知っている

君はあのとき
初めて
スカートでジャングルジムから飛び降りると
パンツが見られると云うことに気付いたんだ

間違いない
間違いない


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038:地下鉄

ただ、その場に座り込んでしまった。
扉が開いた。
人が出た。

泣きたいような
笑いたいような
そんな気持ちで
眺めていた。


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039:オムライス

……ゲートを破壊するのだ

だめです隊長! 装甲が厚すぎます!
くそっ! 半熟のはずじゃなかったのか!
攻撃を一点に集中させるんだ!

ずばばばばばばばばばばばばばば

うわ、なんだこりゃ! 赤い?
気をつけろ! それはケチャップだ!
がっ! あ、あ、取って! 取ってくれぇ!
おい、離れろ! 爆発するぞ!
嫌だ! 死にたくない! 死にたくなべれびゅー

やった! 亀裂だ!
無駄口叩いてねぇで撃て! もうちょっとだ!
くぅ……駄目です! もう弾が在りません!
弾切れしたやつは第八小隊を手伝いに行け!
重器は前へ! 弾幕でケチャップごとはじき返すんだ!

隊長、装甲が……
あ、あれは……チキンライス……


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040:小指の爪

爪を小指だけ伸ばす男は
馬に蹴られて地獄へ堕ちろ