文字書きさんに100のお題 1-10



001:クレヨン

一番好きな藍色のクレヨンが
一番最初になくなる
そんな生活に憧れた

クレヨンを使う年代の子供たちは
天才
藍色の顔に
藍色の手足
藍色の屋根
藍色の空

藍色に支配された世界に満足気
それもいつかは奪い取られる
「でもね、君の肌は
 こんな色してないでしょう?」

天才を知る前に
普通を知ってしまう
神様に認められるため
自分を捨てる

クレヨンを満遍なく使うように
歩道を歩く
指定された色で塗り潰すように
衣・食・住


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002:階段

前に進んでいるのに
上にも進んでいる

いつか
四次元方向への階段を作るのが
俺の夢です


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003:荒野

背中を合わせ
五歩歩いて
振り返り
撃つ

ずっと疑問だった
どうして二歩で撃っちゃいけないのか

二歩目で撃つ俺
ほくそえむ俺
振り返り一歩目で
踊らされる俺

ああ
できないや


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004:マルボロ

煙草を吸い始めてから、
二箱目がマルボロのメンソールだった。
ヒト呼んでマルメン。
響きが何となく気に入って、
二ヶ月ぐらいマルメンを吸ってた。
と思う。
まだBOXとSOFTの違いも判らなかった僕にとって
マルメンが煙草の全てだった。

 煙草はまずい。
 が、
 うまい。

もしあんたが喫煙者なら、
しかもそれが十代からのものなら
僕の言うことがよくわかるだろうと思う。
煙草というのは、
ものすごく気分に左右されるものなのだ。
そりゃもう、どうしようもなく。
いい気分だとうまいし、機嫌悪いとまずい。
これ以上は説明できそうにないが、
本当にそうなのだ。そのまんま。

あの日の学校帰りに
本屋へ行く川沿いの道を
自転車に乗りながら吸ったあのマルメンが
僕は忘れられない。

既に真暗な午後7時過ぎ
溢れる歓喜と微妙な後悔を
煙と一緒に吐き出そうとして、
公園のベンチなんかで吸ってみたりした
あのマイルドセブンが忘れられない。

常にうまい煙草を吸っていたいんです。
誰にも言ったことないけど
僕の密やかな目標なんです。

因みに
今はマルメンからセブンスター、マイルドセブン、ラークを経て、
KOOLとマルメンライトに落ち着いてます。

でも
未だに
タバコの味は
判らない。


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005:釣りをするひと

俺もいつか
裁縫針のような
真っ直ぐな針で
釣りをしてみたいと
思いました

しかし
それを実行することによる効果は
妄想の中だけで
足るような気がして
どうも
できないでいる

君となら
できると思う


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006:ポラロイドカメラ

パチリ
と、切り取る、
ポラロイド。
切り取られたのは
空間ではなく、
時間。

頭ん中ポラロイド。
容量オーバー気味目カメラ。
撮って、切って、台紙に貼り付けて

思い出にして。


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007:毀れた弓(こわれたゆみ)

獲物を狙ってたら
いきなり暴発して
左目に向かって
矢がビュッって
血がビューって
うわーって
痛てーって
そんなん


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008:パチンコ

チンコ!
チンコマンモス!
ひゃっほう!
マンモス!
チンコが!
うひゃー!


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009:かみなり

へそを隠さないと
雷大魔王復活の
生贄にされてしまうんだ
隠せ
へそ

よく考えたら
へそがなくたって
そんなに困らないけれど
それなりに痛そうだから
隠せ
へそ

かみなりは
落ちてるんじゃなくて
上ってるんだよ
ってそんなんどうでもええがな
隠せ
へそ

へそを隠したままかみなりに討たれた死体が発見された
市民たちは大いに戸惑った
へそを隠していればかみなりには当たらないと言う
彼の予言は間違っていたのだ
市民たちは彼の元へと走った
しかし彼もまた
かみなりに討たれていた
彼のへそは
まるでトラウマ持ちのゲンゴロウのようだったと
市民の一人が述べている

そして世は混乱の時代へ


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010:トランキライザー(抗鬱剤、精神安定剤)

言うほど効かないが
打率が高いという点が
アルコールとの違いだろうか

飲まなくてもいいから
飲まないでいいや
痛み止めの方が
重宝するや

でもたまに欲しくなるよね
そういうときに
「はい、これ」と
錠剤を渡してくれる人がいるといいと思う

錠剤は頭痛薬なのだが
僕は彼女のことを完全に信用しているので
たちどころに復活するのだ
トランキライズされるのだ

治りたいと望んでいるのなら
医者や薬はそれを手助けする

俺ぐらい
嘘やら誇張やら自己中やらで固めた
張りぼての鬱となると
別にそんなに
苦痛でもないんだよ

眠りながら
呼吸もできちゃうんだよ
たまに歯が抜ける夢は
見ちゃうけどね