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六月十一日(土)

 奈良先端科学技術大学院大学のオープンキャンパスへ。なんて長い名前。やっぱり設備すげぇなあ。金かかってるなぁ。などとぼんやりと見ておった。生でセグウェイを初めて目にする。「仮想空間と現実空間の融合を〜」だなんて真面目な顔で説明したりしてるのを見ていると、なんだか「よっしゃ」って思いますね。何故かしら。330°スクリーンやら前方向ウォーキングマシンやら。あー先端なんだなぁ。

 多少、体調が悪い熱っぽい。薬でも打って一発で治したい。来週を、むちゃくちゃ長い一週間とします。解放されてみせるさ。




六月十日(金)

 木曜は考え得る限りいやそれ以上に完璧かつ素晴らしい一日であったので僕は思わずテスト中に夢を見たりします。

 THEピーズを聴きまくっている。入試まで五日前となり、気を抜くと引きこもりそうな気分。ああやられてんなー俺、面接だけやってのに。ピーズを聴いていると、一度やる気がゼロになって、その反作用でやる気出たりします。彼らの望むところではないだろうが。全部、全部、全部あとまわしー♪ あかんあかんあかんて自分、面接の文章考えな。

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お金貯めてお金貯めて
なに買うなに買う

きれいなおべべを買う?
光る石でも買う?
IT株で一儲け?
競馬競艇で一攫千金?

ラブリーな彼女に贈り物?
スウィートな彼に貢ぎ物?
煙草をカートン買い?
紙袋ほしさにブランドショップ?

風俗行って元気を貰う?
月の土地でも買ってみる?
いつかのために貯金する?
オシャレ部屋のためにいらないライトでも買う?

別に何したっていいし
何に使うかに興味はないけど
財布を満足させて普通に暮らして
気付いたらなくなっててATMを探す
なんて生活も結構楽しいの

生活を買う?
何買う?

何に、腹立ててるの?

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百円玉を三枚投入して
ヘルメットは被らない
バッターボックスに立ったなら
いざ尋常に 気晴らしのバット

イチローの物真似なんかやりながら
変化球に驚いて 避ける
まだまだ十八球もある
バット振って振って振って振って
一回転 にょらりーん

気晴らしのバット
二十球中 ヒット二本
今日はこのへんにしといたるわ と
切れた息 気晴らせたー 自覚

手首の具合がなんか変だね
知らないおっちゃんにも見られたね
途中から苦痛だったね
気晴らしのバット

手加減したんだってば
気晴らしのバット


- - - -

まだ幸せを感じることができる
そのような回路が残っている
いくらか涙もろくなったかも

断線したはずのアレや
切り離したはずのアレが
ゴミ箱の中で作戦会議
もう戻ってきても大丈夫だよ
ショートして焼き切れるかもしれないけれど

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中学まではまともだった まともだったのに
さんざん無理してバカになった バカになったのに

(THEピーズ/バカになったのに)




六月八日(水)

 確かに受験前の中間試験などやる気はさらさらないのだが、まさか遅刻により一教科テストを受けられずといった事態にまでいってしまうとは思わなんだ。なんやかんやで追い詰められてます。小心者なんだ。

 ファインダーを覗かず撮った写真を現像。意外と撮ったもの覚えてるもんだ。そして意外と贅沢な遊びだなぁ、と。もうちょい安くできんもんか。そう、プラモデルカメラのくせに、レンズとか僕が自分でニッパーで切り取ったくせに、なんかちゃんと動きやがるんですよ。んで発色が無駄に良い。あれはやっぱりフィルムの力か。次回の制限は「このフィルムはチンコビームで撮りきる」。チンコビームってのはカメラを股間にあてがった状態でシャッターを押す撮影法を独自に発展、昇華させた技なんですが。シャッターを押す瞬間に「チンコビーム」と発しなければならないので、人にはお勧めできません。まあ前回のフィルムで初登場したチンコビーム作品をちょっと気に入っちゃっただけの話なんですが。自転車に乗りながらビーム出したら、前カゴとか写り込んじゃってるの。いいね。そして下へ、下へ。

 じわりじわりと追い詰められているからか、何も浮かびませんな。書くこた書くけどさ。「君」とか「あんた」とか、そういう類の単語を使いにくくなってる自分が居る。

- - - -

はい キーボードに顔近づけて
思い切り息を吹きかけてみましょう
びっくりするから

驚くべき量の灰が舞って
ああ 煙草を吸いながらキーボードを打つのが上手くなるということは
こういうことなんだな って


- - - -

Peaceのメンソールもなくて
KOOLも置いていなくって
仕方なく自動販売機でMalboroメンソールを買う

このボックスケースを見ると
いつもあんたのことを思い出すよ
結局、一度も目にすることの出来なかった
あんたの彼女を連想するよ

愛車の白マーチは
ディズニーキャラクターのヌイグルミだらけの、あのマーチは
まだ現役か?

あのヌイグルミ
どかされてなけりゃいいんだけれど


- - - -

君の手作りぬいぐるみは
僕のベッドの右端で
今でも首を吊ってます


- - - -

結局
どちらかが不幸になる
あるいは
どちらも不幸になる


- - - -

不辛って単語があったっていいんじゃない?

ああ、それあるよ
って言ってくれよ


- - - -

死にたくなくもない
生きたくなくもない
死ねなくはない
生きられないわけじゃない

頑張ろうという気がないわけじゃない
頑張ろうという気はない

殺されたくなくはない
殺したいとも思わない
殺された
生きた

生かされているとは思わない
生きていると思う
象限は違うかも知れないけれど

接頭語に「とりあえず」が付く
取り合いたいとは思わない

駅の隅っこで三角座りして
傍らに空き缶を置いて
その中にどんどん小銭が貯まっていけばいいと思う

宝蔵院の二代目胤舜と戦って死ねたらいいなと思う
思わない
思う

めくらになりたくない
つんぼになりたくない
びっこを引きたくない
動けなくなりたくない

考えたい
考えさせられたくない
感慨したい
憤慨できない

一人で生きているんだと勘違いしたい
事故で即死なら代わってあげてもいい
頭の中にモンキーレンチを突っ込んでほしい
俺は痛い痛いと言う
言う
思う
言わない
言う


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死なない蛸は死んだ




六月七日(火)

 久々に映画を観る。本当、久々。式日でした。ツタヤが半額になったときに限って、観たい映画がそれほどない、あるいは思い付かないという状況なもので、どうしてもジャケ借りになってしまう自分が少し好きになる映画。あああ困った大好きだ。話も役者も衣装も世界観も好きだ。ライブ盤でNUNBERGIRLの徳井さんが言っていた「一見してブッ壊れとる女」という言葉を思い出していた。ああ、もう、ブッ壊れとる。庵野監督って、実写もいけるんやね。なんてこと言うとどこかから怒られそうだけれど、まあいいか。

 狙いが丸見えなんだけれど、赤の使い方がとても好き。原色が飛んでたのは、フィルムの特徴なのか、エフェクトなのか、解像度の問題なのか。ブッ壊れとる女の衣装が好き。それがだんだん大人しくなっていくのも好き。林原めぐみのナレーションが、どうしても癖があったけれどいつの間にか慣れた。最悪のエンディングしか予想できなくて、でもなんか、素直によかった。ああ、あれは見てほしいなぁ、と。なんなんだろ。魅力がわからん。でも魅力はたしかに、そこにある。

 まともな文学好きの人は決して近寄らないような本を好きになります。まともな写真好きには、オモチャ以下だと蔑まれるカメラを愛しています。音楽だけが、割とまとも。僕は仮にも映像創作集団に所属しているにも関わらず映像のことは全く判らないので、しかしそれを積極的に判らないと受け止めることで、強みにすることができます。好き嫌いは背骨で判断しましょう。すげぇと思ったらすげぇと言いましょう。気が付けばすげぇすげぇしか言えない自分を発見したりもしますが、そんなときは「まいったなー」と苦笑いして逃げましょう。他人の評価なんて関係あるかいワシはこれが好きなんじゃ、と言い切ることができたなら、それはもうある種終わっちゃってるわけですが、つまり同時に始まりですし。とにかく人生映画TOP10に式日がランクイン。

 証明写真を撮る。写真屋の婆が三十分程待ちやがれと言うので、待つ。スーツ姿のまま本屋へと向かう。トイレに入る。誰じゃこりゃあ。胡散臭い。拙者、胡散臭くなってしもうとる。わはは。そのまま「ぱ〜ぷる」などを立ち読む。ああ胡散臭い。周囲一.五メートルまでもが胡散臭い。帰宅の道中、前輪がパンクしたままの自転車にまたがる胡散臭いスーツ男。はは、受かるかの、専攻科。試験日まで残り八日。




六月六日(月)

さあみんな、今日はムムの日だ!
むむむむ、むむむ、む、むむむむむむ、むむー。

なんだか無気力ニートさんな気分なので、箇条書きで。
完全黒染。ブラックまーもー誕生。悪玉です。
テスト期間なので、いつもより睡眠時間が多いのです。
起きてるとき以外はだいたい寝てる。
僕は未だに三本入り198円とかの、T字形の、辛うじて使い捨てではない、二枚刃とかの、なんか滑るはずのない持ち手に無意味に滑り止めとか付いちゃってる髭剃りを使っているのですが、CMなんかで異国人が「はは、切れておらぬ」などと明瞭に愛想を振りまくような髭剃りにシフトするタイミングがわかりません。ひいては電動式の、刃が振動するハイテク髭剃り。あれは少し使ってみたいが、伸びないもんはしようがない。
そういや高専病って最近きかないですね。俺たちは最後の高専病患者なのかも知れない。なんか平成生まれはそんなもん関係ない気がする。
ここに、どこまで書いて良いのか、もうかれこれ四年近くやってるのに、未だに判らなくなる。
勉強しまんがな。




六月五日(日)

 四日。先週の撮影の続き。男と、ていうか牧野くんとキス。リテイク。キス。リテイク。キス。リテイク。キス。はいOK。終盤、映画の神がスコールを降らせる。大はしゃぎで飛び出す制服四人と監督。ノリでラストを撮る。俺、もしかしたら凄い場面に遭遇できたのかもしれない。全員トリップ状態。わひゃひゃひゃひゃ。

 撮影終了の後、その足でフリーペーパー展覧会(FreePark)のためのキューブ搬入及び展示準備にアウラクロスへ。他の団体が凄すぎて凄すぎて。今考えたら、最年少の自分。唯一の十代。さあ皆、俺の若さを吸い取るがいいさ。でも精神年齢は四十歳。などという悠長なことを考えている暇はなく、予定時間を二時間もオーバーして展示完成。立方体がメインかと思いきや、他の団体さんは壁展示も素晴らしかったことが敗因。いや負けたわけじゃないけど。よかったら見に行ったってっていうか俺を連れ出して。自転車ぐんぐん!様が素晴らしい。アイドルやってて、CDも出してるって。

 そうこうしているうちに、終電が無くなる。ああ近畿鉄道よ。天王寺のカラオケで世を明かす。帰って寝て起きたら三時過ぎ。そして今に至る。明日から中間試験で、十日後はお受験です。どうしたってネタ人生から抜け出せないでいる俺は、またプラモデルカメラで写真を撮り始めたりしています。限定ルール適用。「このフィルムはファインダーを覗かずに撮りきる」。

 四日午前七時からの、素晴らしすぎる二十四時間。俺は絶対忘れない。だなんて言いながら、きっとこんな出来事もいつか埋もれていってしまうんだろうということも予見できてしまうが、それでも俺はしつこく思い出す。なぁ、死んだ人、俺は生きているからお前よりも凄い。中間試験はあるけれど。




六月二日(木)

 感覚基地活動。大阪は梅田の街中、放課後、自分の専門とは全く関係のない学校に出入りし、ビルとビルに区切られた暗い空の下、、300×300mmの発泡スチロール製立方体の一面を、紙ヤスリで擦り擦り擦り擦り擦りまくり、下半身は白く発泡スチロールの粉だらけとなりながら、口笛なんて吹いてみてる自分に、にやり。最近こんなのばっかりですね。なんて喜ばしいことだろう。

 数ヶ月ぶりに郵便貯金をチェックしてみると、バイトを休止した時期が上手いこと作用したのか、計算に入れていなかった給料が八万ほど入っていた。携帯代で三万ほど引かれていたが、そろそろ生活の維持費も払えなくなるなぁなんて考えていたことを思えば、嬉しい誤算。なんだ、リッチなんじゃん、俺。と思ってしまうのは間違いなのかもしれないけれど、少なくとも傘は買えました。百均の傘って可愛いの多いよ。

 ちょいとやらねばならぬことが色々とある。




六月一日(水)

 カラオケ。やっとこさ放送禁止用語の審査を通過したのか、銀杏BOYZが入っているということで、歌う、歌う。ナンバーガールの物真似などやらかす。あの地響きのような声はどこから出ておるのだろう。歌っている途中に、喉に刺すような今までなかったパターンの痛み。カラオケに行くと、ちゃんと聴いたことはないくせに、GoingUnderGroundの何かの歌の歌詞、「上手に歌いたいのになあ」というのがふと浮かぶ。

 やはり疲れたか、気が付くと午前四時過ぎ、大音量のビョークの中、眠っていた自分を発見。ものすごい寒さ、スズメか何かの鳴き声、アルコールを摂取したわけでもないのに、それに匹敵する気持ち悪さ。色々浮かぶのに、それを画面に転写する方法が思い付かないと思い込んでいるのは単に気力がないだけであるのだが、まあしょうがない。

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グミ、チョコレート、パイン。
僕の地方では、グリコ、チヨコレイト、パイナツプルだった。
あの娘はチョキチョキチョキの連続攻撃で、圧倒的なスピードで歩を進める。
僕はグーしか出せない。
チ、ヨ、コ、レ、イ、ト、と大股で上り坂を進む彼女を見上げる。

「じゃんけん、」遠くで彼女が言う。
僕はグーを耳の側辺りまで振り上げ、しかし「ほい」とは振り下ろせない。
彼女が彼女のタイミングで、チョキを繰り出す。
チ ヨ コ レ イ ト

ゴールだと決めた電信柱は、もう過ぎている。
この勝負が何なのか、僕はもうよく思い出せなくなっている。

「じゃんけん、」背を向けたままで、彼女が言う。
僕はぢぃっと死んだふりをしていて動けない。
遠くで誰かの「ほい」という声が聞こえる。
彼女の振り下ろした手は見えない。
どこかから野球部の練習の声が聞こえている。

電線で区切られた空を見上げる。
一瞬で星空になり、陽が昇り、そしてまた暗くなる。
「じゃんけん、」
笑い声がする。
誰のものかは、よくわかっているけれど、わからない。

「ほい」
言いながら、グーを突き出す。
電信柱の冷たい感触は、しかしとても心地が良い。
右手でチョキを作り、左手のグーと戦わせてみる。
相打ちじゃん。
少しほくそ笑むが、また誰かの「じゃんけん、」と言う声が聞こえて、
証明写真のような表情になってしまう。

「ほい」
タイミングを無視して、グーを出してみる。
来た道を振り返り、遠く坂の向こうを見上げて、
グ リ コ
と言いながら、三歩、真横に進んでみる。

彼女とは違う周波数で細い路地に入る。
笑い声は誰のものなのかわからない。
僕はグーを真っ直ぐに突き出し、
グリコグリコグリコグリコグリコグリコ
呟きながら進んで
いつの間にか帰り道がわからなくなる。