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8月14日(Sat)

 お盆らしいのです。マクドが大変です。最近はマクドでも癒しを得られなくて困ってます。一日に1,2回なら、過去であればゆかりと呼んだであろうお客さんは来るんですけどね。そう、この前、ほぼ完璧なゆかりがお客さんとして来たよ。カップルだった。レジを挟んで向かい合って、右にゆかりがいて、左に男がいて、何を頼むか悩んでいた。何故だか自暴自棄で投げやりな自信をつけていた僕は、真正面に立って、メニューを覗くゆかりの顔をじっと見ていた。本上まなみとcharaと眞鍋かをりと菅野美穂を足して三乗してアルカリイオン水で薄めたような顔だった。アヒル口で、肩にかかる位の黒髪だった。ずいぶん長い時間に感じた。口から僕の大切なものを、丸くてぼんやり光っててひんやりとした感触なのにどこか温かいアレを、差し出してしまいそうになった。

 じっと観察している間になんだか恥ずかしくなってきて、僕はその姿勢のままでストローの量を確認したり、ガラス窓を通して見える向かいの古着屋を眺めたり、メニューを見るゆかりの視線の先をゆっくりと追ってみたり、その流れでゆかりをチラッと見て、また口から大切なものを出してしまいそうになったりした。そのうち、左に立つ男の代わりに自分が立っている姿を想像した。自分なら何を注文するだろうと思った。実はそれほど長い時間でもなかったんだが、僕は割かしそういうタイプの想像なら光に近いほどのスピードで巡らすことができるのだ。

 ゆかりと男は柱の陰になって見えにくい二人掛けの席に座った。僕はいつものようにカウンターの隅っこで、コップに氷と水とレモンリキッド一つとガムシロップ二つを入れてかき混ぜて、一気に飲み干した。そこからは、なんとかギリギリでゆかりを見ることが出来た。こんなサボってるところ見られたら、と思ったが彼女はマイペースにポテトを摘んでるし、向かいには男もいた。そう、その連れていた男が別にとびきりのカッコマンだとかそういうわけじゃないっていうところも、好感を持てた。どっちかと言えば駄目男な部類に入るんだろうが、そう思ってしまえば俺だってそうなので、なによりゆかりに悪いので、その妄想を必死で引っ込めた。

 三度目に除き見たときには、既に店から出ていってしまった後のようだった。ありがとうございましたー。





8月13日(Fri)

 何か書きたいとは思っているのだけれど、書く内容については何も思い浮かばない。僕が何か随筆やら評論やらエッセイめいたものを書くときは、内容を決めて書くことなんて滅多に無い。ぐだぐだとくだらないことを書き進めていくうちに、勝手に思考がジャンプして、結果的にそこに辿り着いてしまうだけであって。

 概念、といったものをとても大切に思う。人には人それぞれの概念、哲学、思考の方向性ともいえるものがある。言わば初期条件だ。俺には初期条件が与えられている。いや、自分で作り出したものなのか。幼い頃から僕は想像夢想妄想少年だった。一時期は、この世の中できっと自分を見張っている隠しカメラを探したし、いつドッキリカメラが種明かしをしてくれるのかとドキドキした。自分は実験台なんだと思っていた。くだらないB級映画やSFライトノベルから、その妄想はより現実味を帯び、飛躍し、確たるものになっていった。今やものすごい細密な誇大妄想にまで成長し、さすがにもう信じてはいないものの、それでもやはり自分はどこかで「最後に大どんでん返しでこれが実現してくれたら」と今でも期待してしまっている。僕はいつか、人にこの話をしてみたい。脳みそのバルブを緩めて、吐き出してしまいたい。自分の話をしてみたい。思えば、今まで自分について話したことなんて数えるほどしかなかった。

 もう時間が無い。メモしとく。客観視とか。




8月12日(Thu)

 昔々に落として、聞いて、精神を持って行かれかけたカールマイヤーの音源が出てきて、なんか暇だったんで、実験音楽とか現代音楽とか精神音楽とか色々探してたんです。数ヶ月ぶりの2CHで。そしたらねーなんかねーやっぱりやめときゃよかった。風呂入れねぇじゃねえか!ああいうのって意外と多いんだけれど、聴いたところやっぱりカールマイヤーが最強みたいですな。やられたーと思ったのも結局はマイヤーのリミックスだったりしたし。あと、アフリカのケチャもすごい好きな感じ。CDって売ってるのかなあ。ケチャ・ベストみたいな。探そうにもどこ探せばいいのかわかんないけどね。民族音楽か?

 それにしても俺もやっぱり成長してる。初めて聞いた時は確か日記にも「こんなもん夜中にイヤフォンで聴いたら絶対発狂するがな!」って書いたような気がするんだけれど、それできちゃってるじゃないかー。いや、もう狂ってるなんてことは無いと思うんだけど。狂人はマクドのカウンターなんかできないだろ、たぶん。

 あーでも変な音は聞こえる。今ね、家族が出っ払ってて、一階に婆ちゃんがいるものの、二階には俺一人なんですよ。部屋から少し離れたところの廊下を歩く音がする。廊下歩く音ってね、独特じゃないですか。あんまり形容できない。それだけに、何かの聴き間違えってことはないと思うんだけどね。しかも毎回三歩ぐらいで止まるしさ。まあ走ってきていきなり部屋のドア開けられて「バァー!」みたいなことなっても困るんだけどさ。どたどたどたガチャ!バァー!「ドヒャー!」バァー!!「ウヒョー!」みたいな。困るなそれ、なんか怖いぞ。でも誰もいないしこんな時間婆さんも寝てるからね。まあ前々から一階では身長2mくらいで胴が長くて白いワンピースっていうかテルテル坊主みたいなん着てる女の人は見てたから、あーとうとう二階にも何かやって来たかーってな心境なんですが。おー怖ぇぇなあ。勝手にウロウロしないで欲しい。寝てからにしてくれよ。っていうか俺は風呂に行きたいんだから、そもそも俺はそっとしておいてるんだから、そっとしておいてください。確かに僕も白い人にはそんな毎回も驚いてやれなくて、申し訳ない思いもあるんだけれど。あーイヤホンが不快だー。


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 シ リ ー ズ ア ラ イ グ マ 


 友人が急に
 「そういえばこのジーパン、この間解放倉庫で買ったんだ」
 と言い出した。

 股の部分を開いて見せ、

 「ほら、ここさ、チャックのとこ、ボタンになってるやろ?
  これものすごい外すの面倒くさいねん。固くて。
  でもさ、これ履いてれば、外すの面倒で
  急にセックスしたいなんて思わない」

 と言った。

 僕が

 「でもそんなことないんやろ?
  実際にそのボタンが止められるもんなんて
  小便と、オナニーと、
  泥酔してるときの着替えくらいのもんだ」

 と言うと、苦笑して
 「結局は負けちまうんやけどな」
 と言った。

 僕はその、股のボタン(ボタンフライと云うらしい)を見ながら
 貞操帯だか貞操鎖だか云うSMの道具を思い出して
 彼にその話をしたが、
 彼はもう、そんなことどうでもよさそうな顔だった。

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8月12日(Thu)

 一昨日、昨日と、実はイベント事の予定があったんだけど、携帯なくなっちゃ連絡もくそもないので強制的に中止に。家で大人しくしとけってこった。一昨日のは学校仲間と第二次吉野川放流大会だったので、まあ今まで計画だけ立てといて急に連絡とれなくなったわけだから死亡説の一つも流れているかもしれない。メンバーでここ見る可能性があるのはモリムーくらいだから、気付いたら連絡お願いしたい。バッテリーなくなった状態で落としたし、なにより回線止めてあるから電話してみても繋がることはないし。メールは、デーモンで返ってくることすらなく受け取られることもなく、読まずに食べられちゃうんだろうし。昨日のは、メル友と飲み会しようって話だったから、結構残念。これを期に、もうちょっと青春らしい生き方をします。

 この前、「俺なんか秘密ばっかやでー」と言った。秘密っていうのは、その秘密の存在自体が秘密にされることでこそ秘密たるのだ、というのがおいらの持論。「こうこうこうだけど、これは秘密」っていうのは、実は既に秘密ですらない。優越感とか、他人との一枚壁とか、ATフィールドとか、そういったもの。酔狂の隠し事だ。

 存在を明かされてしまった、所在の割れた秘密は、まずがっかりする。秘密が「あーなんやそれー、そんなやったらもおええわー」とダラケてしまうのだ。そうなったら、あとはその秘密も“話題控え室”で出番を待つのみ。秘密なんてのはその程度の存在だし、第一に多くの場合、誰かが秘密だ秘密だとうそぶいて楽しんでるような場合には、既に周りには感づかれていることがほとんどだ。特においらみたいに、基本的にはフラフラと鈍感愚鈍を演じているくせに、チンコの先と特定の事情に対しては恐ろしく過敏になる人間には。

 ちょっとヤケになっていたことを少し反省。きっとそういう時期なんだ。はっしー(橋本)には注意するように言っておこう。無駄だろうけど。でも、携帯でもなくさない限りは青木みたいになっちゃうかもしれない。まあ俺にはそこまでいく度胸すらもないんだけれど。携帯もしばらく持たない。またAUだと、番号も一緒でメルアドも一緒、なんてことになる。そうした方が絶対にいいんだろうけど、もういいやー。必要なら番号くらいまた聞き直せる機会があるだろうし。それにしても何か勘違いをしていた。何度か会ったことのなる人なら携帯落としたりしてもまた聞き直せる、と思っていたんだけれど、考えれば、そういう人には自分の生活とはまったく関係ないところに生活している人が多く含まれる。普通には絶対逢うことのない人。そういう人って、もう無理なんよな。四人と飲み会の約束が、一人と16日の吉野の花火に連れてってもらう約束があった。そういう人たちを合計したら、七人くらいだろうか。ヤケやったんよ。残念だけど俺なんか覚悟できるだけまだいいんであって、失望するのは向こうの方だ。まぁさよならだけが人生だ。っつー。あー都合いいなあ俺。

 落ち込んでるんだかなんだか、わかりゃしない。本当は予定で埋まっていたはずのここ三日間は、今まで週6でバリバリ働いてたバイトだって中休みを取っている。やることがないから、ツタヤでビデオを借りてきた。「刑務所の中」「白痴」「青の炎」。レンタルは一週間なのに昨日だけで二本観てしまった。思えば俺の夏休みなんてのは大概がこんなもんだった。一年前も、二年前も。もっと前はよく覚えていない。本来の姿に戻った?違う。本来の姿なんてもんは、それを人間が考えるときにそいつの頭の中にだけ現れる幻想だ。ただ、今のこの姿、それしかない。それにしてもここしばらくの日記の饒舌さはなんだ。キモイぞ、俺。

 白痴が、良かったです。坂口安吾の小説なんてそもそも映像化できるもんじゃない。っていうか小説から映画化ってあんまり苦手なんだよ。別もんなんだし。だから、そういうときは完全に別のものとして取り扱ってほしい。「あれ小説と全然違うよー」。当たり前じゃねえか!つまり、どこをインスパイアするかっていう問題。インスパイア?とにかく、白痴はいい。中だるみするけど。内容は筆するようなもんじゃないんだけれど、とにかく世界観がステキすぎる。戦前?戦後?戦中?明治から現代が一緒くたになったような世界。ここのリンクにもある「帝国少年」や、椎名林檎の映像世界観が好きな人は、それだけで楽しめるはず。ラリってるときにオススメ。




8月10日(Tue)

 携帯落とした。ついでに色々清算っていうか清算することになりそうです。いやー世の中都合のイイコトうまくいかないようにでけてるんですにゃー。ってわけで、しばらく俺に連絡しても届きません。残念でした。まあ一番残念なのは俺なんだけどさ。いやーまいったまいった。

 前回の続き。

 「俺の誕生日の、次の日に彼女の携帯から電話あって、でも出たら彼女の親父さんで、事故って死んだって。誕生日の前日に。即死って。全然実感ないねんやん。でもあれやねん、三日ぐらい経ったらもうあかんねん。会えへんくてさ。会いたいから携帯とか持つねんけど、そこでまたそんなんしてもしゃーないって気付いたり、そんなんばっかで。もうおらんってなんやねんそれ、会いたいんじゃぼけーって。きっつかったなー。まあ今もうこんなんやけどさ(笑」

 「初めてデートしたときにな、いきなりノーブラやとか言われてん。つーかさあ、そんなん無理やん。ぶわーなってもうて、なんも言えへんし、苦笑いだけして、そのまま。んでしばらくしたら自然消滅してた」

 「彼氏もさあ、みんなサークル同じやってんやん。んで俺その子の相談役みたいな感じで。一緒に出かけたりもしてんけどな。映画も公園も海遊館も行ったし。その子な、彼氏おるってみんなには隠しててんやん。で、俺告ったら、やっぱり彼氏がどうのこうのって、まあ結果的にはフラれてんけど。次の日には、その子サークルのみんなにあれが彼氏やねんってことむちゃくちゃ言ってた。なんかなーそれがいっちゃんやばかったなー。」

 青木も、西川も、橋本も、すごくよかった。俺には今まで一度も、誰かに自分の恋愛話をして、そんでみんなで頷き合うなんて経験はなかった。すごく身に染みた。特に橋本がつらつらと語った内容が自分の体験とリンクして、俺はコップに注がれたビールを差し出す代わりに、倒れこんできた橋本を力いっぱい抱き締めた。なんかホモみたいだなーと思った。でもそうすることが一番自然だと感じた。

 死別、というシャレにならない話も出た。俺はそういう類の話を全く信じない。でも、このときは違った。「まあ今はもうそんな大丈夫やけどなー」と言う青木は、違った。嘆き悲しんで潰れるでもなく、思い出して鬱になるでもなく、マイペースに布団に広げたノートパソコンで将棋をさしていた。ああ、こいつは違うんだなと思った。受け止めたんだな。俺は、男が女に話す自称「つらい体験談」が、大嫌いだ。適当な脚色で彩りながら、言ってることは結局「同情してくれ、そんでうまいこといったら可哀想な俺と寝てくれ」。それにも気付けない奴ら。本当に世の中から全滅してくれればと思う。青木はもっと酔うべきだと思った。将棋なんか打ってる場合かよ!ここではもっと駄目になっちゃっていいんだよ!グデグデでもいいんだよ!俺たち大丈夫なんだ。

 午前四時ごろ、二秒寝て三秒起きるというサイクルを繰り返した自分を覚醒させて、みんなで神楽にラーメンを食いに行こうとなった。まともに自転車を漕げているのは青木ぐらいで、あとはみんな半死状態で本能だけで動いていた。一部本能も動いてない人もいたけど。神楽に辿り着き、おいしいラーメンを頼み、すする。俺には食欲はまったくなかったが、周りは結構普通に食ってやがる。本当に気持ち悪いときっていうのは、他人が食事しているところを見るだけでも吐き気をもよおすことができちゃうのだ。とにかくもう吐いてしまいたかった俺は、麺やら白菜やらを無理やり胃に詰め込み、綺麗に掃除された割広の個室で、便器に水を流しながら喉の奥に指を突っ込んで二度、三度と吐いた。まだ温かさすら残っているような気がするラーメンは、何故か丼に盛られていたときとは色が違って不思議だった。初めて訪れた便器に向かって吐くのは、これで何度目だろう。三度目までさかのぼることが出来たが、思えばすべてこの夏休み以内の出来事だった。トイレの鏡の中、出涸らしの茶のような中途半端な茶髪がパーマのように絡まって、血色が悪く、少し頬のこけている男の、赤く滲んだ目が俺の目を覗き込んだ。鏡の中の自分に向かい「ピース」と口にしようかと思ったが、やめた。座席に戻ると、西川がニラで麺の見えない丼の中に、唐辛子ペーストの入った小ビンを落下させてニヤつきながら慌てていた。「俺らって最低の客やなー」と自ら口にしてみせた彼は、帰り道で派手に転んで、数ヶ月前の俺自身の怪我を思い出させるような裂傷を負った。大笑い。

 福井の家に帰ると、部屋の主が潰れたまま爆睡していた。そこへ倒れこむ。主がキレる。橋本、藤田、西村が帰った。部屋に残った俺と青木と西川は、そのまま睡魔に従い、主である福井は「下で寝る」と言い残して部屋を去っていった。少し酷いような気もしたが、でも毎回こんな感じだと思い忘れることにした。

 目が覚めると、西川がGTAという何でもやりたい放題のゲームで虐殺劇を演じていた。本体カバーの外されてほぼ壊れかけのPS2は、ちょっとしたことですぐ止まった。そもそも3回に1回ぐらいしか起動しなかった。そうこうしているうちに時間になり、俺と西川は帰路に着く。午後1時で、俺は3時から0時までバイトがあった。ああ、ハードな一日だと思った。失恋話ぶっちゃけ大会なんて、これを書こうと思って初めて思い出したぐらいだ。忘れていたんだ。なんて素晴らしいことだろう。

 一度しか言わない、なんてケチなことは言わない。けど、あんまり言わないからよく聞いてほしい。
 俺たちは、大丈夫。




8月10日(Tue)

 セイカツ スルノニ ヒッシダ ゼ (生活するのに必死だぜ)

 なかなかパソコンの前に向かえない、そんな生活だ。というか携帯もまともに弄れない。これは右手の親指を怪我してるせいだと思うんだけど。

 やりたいことがある。それは「できる」タイプの事柄だ。時間がない、というのがとても出来た言い訳だと知っている。時間が足りないわけはない。朝の九時から六時までマクドで働いて、そこから荷物だけ家に置いて地元の盆踊りに中学時代の人たちと集合して、最後の花火が終わったらオークワに酒を買いに行って、友達の一人の家で飲んで飲んで、明け方にラーメンを食いに行き、食ったものをすべて吐き出して、自転車でこけて、一眠りして起きたら昼で、いつの間にか人数は半分以下になっていて、誰かがゲームで大量虐殺をしてるのを開かない目でぼんやり見て、気が付いたら時間だったので、家に帰ってシャワーを浴びるだけのこともできずに頭痛と吐き気にムチを打ち、バイトに向かう。また3時から12時まで働く。疲れて、眠る。それだってさあ!なあ!違うだろ!違うんだろ!そんなわけなんてねぇんだろ!おれら可哀想なんかじゃないだろ!そんな目すんな。

 七日。バイト。 八日。バイトして祭りに行って泊まる。 九日。起きてバイトに行く。

 毎年恒例化している、地元での盆踊り後のお泊り会。今回はちょっと激しかった。七人くらいだった。合計したら、酒とツマミに一万弱のお買物。いいちこをパックで買ってみたり。でもそれだって大したことではなかった。

 文字通り煙たがられてる俺は、ベランダでグリーンラベルを灰皿にしていて、隣りに座った貰い煙草の西川と、ニコチンの量について、メンソールが性欲に及ぼす影響について、一日のオナニーの回数について、ノーブラという単語から連想する個々の思い出について語っていた。必要より少しだけ多いニコチンを吸収した俺は、部屋に戻った。橋本が青木らに、一月前に起きた大学のテニスサークルでの恋愛ドタバタ劇について話していた。「俺あっかんわー、ほんまこんな恋愛ばっかやわ」その一言で、俺は気付き始めていた。今日はたぶん女の話がメインになるんだろうな、と。腹なんてくくる必要はなかった。酒に呑まれているときに、腹なんてくくれるわけがない。

 少し前に松尾宅に泊まったとき、俺は松尾と駒井の彼女と、寝てるその彼氏に言った。「いや、俺なんかもうあれやで、秘密ばっかやで。隠し事ばっかり。死ぬほど隠しまくってるもん。ほんなもんほら隠して隠して誤魔化してーって・・・」松尾と駒井は、隠し事なんかないと言った。「隠す必要なんかないもん」と。必要があるわけじゃない。ならなぜ俺は隠すんだろう。って、そんな自己分析できるわけがない。ただ、たぶん松尾も駒井も、俺の世界の中心に、結構食い込んじゃってるからなんじゃないかなと思った。俺が全部話しちゃったら、こいつらも関係しちゃう。ニュートロンが電気信号を送受するみたいに、ニュータイプが敵を関知するみたいに、俺と、俺の抱える下らないファッキン隠し事と、そいつらが一瞬でも繋がっちゃう。きっとそれを避けようとしたんだと思う。何故避けるか?それこそ、そんなもん知らんがな。最終的には俺がそういうタイプの人間だとしか言い様がない。でもさぁ、そういうタイプの人間って実は多いんだよ。

 中学の友達たちは、みんなバラバラ散り散りになった。一年振りに会う奴もいた。会ったとしても、最近の話はせずに、小学校時代の話なんかで盛り上がっていた。中学の友達と会うときは自分も中学時代まで遡って、そこで時間の流れを止めた自分になってしまおう、高校以後の話をしたらバラバラってことを実感しちゃうからやめとこう、という心理だったんじゃないかと俺は俺を、俺たちを分析した。でもあの夜は違った。俺たちは思う存分、自分の中のなんやかんやを吐き出した。こうして一緒に酒を飲んでいるものの、通常の自分の世界とは別の場所にいる人たちに、だからこそできる話を、こいつらにしか出来ない話をぶちまけた。同情が欲しかったのかもしれない。なんとでも言え。でもあの夜、福井の家での俺たちは、間違いなくステキだった。むちゃくちゃに格好良かった。悲しかった。キモかった。ウサンクサかった。美しいドブネズミ、とまでは行かないけれども。

 一通り話が終わった後、俺は急にステキなことを思い付いた。俺はいつだって急にステキなことを思い付くのだ。みんなにビールを注いで、右手に掲げさせ、隣りの西川に聞いた。「ゆうちゃん、名前は?なあ、(みんなを見渡して)名前言おうや」。一瞬空気が凍りついた。が、それもゆうちゃんの一言で掻き消える。「・・・サキ!」ゆうちゃんはやっぱり男前だ。「ユカ!」「ミユキ!」右手が上がっていく。実はこの名前、俺ちゃんと聞いてなかったから、ここに書いてある名前とは全然違うと思うんだけれど、そんなリアリティはどうでもいい。誰かがふざけて「陽子!」と言った。陽子というのは、円陣の後ろで潰れているこの部屋の主である福井の、青春の原因だった人の名だ。ビールを一缶飲み切れずに潰れたこの男が、でも一番ステキなのかも。こいつはアルコールなしでも自分から話を振った。「×××!」俺も名前を叫んで右手を掲げる。右手が揃った。「おっしゃ!」何の号令なのか意味がわからないが、それでも良かった。全部一気飲みしたかったんだけれど、無理だった。恋愛だかどうだかよりも、そのことがなんだか無性に悲しかった。

 後編に続く。




8月6日(Fri)

たぶん正体はみんな 飼い主を忘れた猫
どっちの膝で甘えるか考えてる
愛されてるのにもっと 誘惑されたがってる
パンツの中にいつだって本当の俺 君

(ゆらゆら帝国/されたがっている)


- - - -

絞って 君の真っ赤な血を全部
乾かして 汗も涙も血も全部
もいちど頭絞って 滲み出てきた緑の液体が
君のすべてさ
僕のすべてさ
君のすべてさ
悲しくなるけど じっと見てると
なんだか光ってる
少し綺麗な気もしてきただろ?

(ゆらゆら帝国/発光体)


- - - -

山を前に登りもせず 川を前に渡りもせず
橋のない湖に立ちすくむ
壁の前でへこんでいる なくなりそうな君が好きさ
消える前にこの手で消してやる
君は僕の幻だった 遠い過去の面影だって
何もないこの手で消してやる

(ゆらゆら帝国/アイツのテーマ)


- - - -

毒入りリンゴ 可愛い彼女
ばれないように 齧らぬように

さみしいときには くちびる噛んで
ばれないように 昨日泣いたこと

祭りの後の 飛べないカラス
気持ちはずっと あの空の上

楽しいときにも 忘れちゃいないさ
終わりがくることも 戻れないことも

こんな日がいつまでも 続くならいいけれど

毒入りリンゴ 可愛い彼女
一口 齧って
僕は死んだのさ
祭りは最初からなかったのさ

(ゆらゆら帝国/パーティはやらない)





8月6日(Fri)

 4〜5日にかけて、どんの家にお泊りでした。カタクリさんが参加だのどうだのっていう話はあったのだけれど、なんだかんだで男二人でのパジャマパーティに。っていうのはどうにも悲しすぎるので、オレっちを誘ったら彼女も来るというので、その彼女の友達を連れて来いと言ったら二秒で断られてリボルバージャンキー。恒例のホットプレート大会、ドンジャラ、布団でぶっちゃけ大会などと、見事にまったりとした雰囲気で酒が進む。オレっちは潰れる、どんは何か撮ってる、彼女さんはオレっちと絡まっててあんまり喋らないけど時々絶妙の発言をする、俺は潰れてるのに飲んで吸って人生論恋愛論熱弁してぐだぐだ。そういえばね、なんとなくでクレイジーケンバンドのCD借りたんですが、食わず嫌いでした。なんかねー否定されると思うんだけど僕あれ大好きだわ。聴くんじゃなく、流すんだ。酒でも呑みながら流すんだ。まあこの晩は、クレイジーってよりもゆらゆら帝国だったけどさ。

 書くことっていうのは、自分の考えをまとめることだ。喋ることだってそう。というか、自分から何かを表現、搾り出すっていう性質のこと全てに云えるんじゃないだろうか。自分の中のあれこれを、一旦自分から離れたところに置いてしまう。そうすることで距離を置いて、初めて客観視できる。そしたらあとは整理するなり書き換えるなりして、もう一度仕舞い込めばいい。一昨日の僕は、まさにそれだったように思う。できれば、もっと、他人が搾り出したモノに触れてみたい。触れてみたい。

 なんだか知らないけどね、今俺はすごい悲しいのさ。
 なんだか知らないけどね。




8月3日(Tue)

 グミチョコレートパイン(大槻ケンヂ)のパイン編を買おうとしたのだけれど、財布に1209円しか入っていなかった。昨日バイトのアップ後に、飯を食いに行ったのが原因だろう。俺は飯を食って、グミチョコが買えません。なんて悲劇だろうか。

 ハイロウズがツアー?東大阪?行くしかないだろ!って思ってたら、また奈良100年会館に来てくださるそうな。これしかないだろ!このために今まで働いてたんだろ!っていうかチケットってどうやって買うんだ!わっほーい。

 僕っていう人間はいつまでたっても電話というものが苦手なのだろうか。苦手なのだろう。これはとても損なことだと最近気付いた。嘘。ずっと気付いていた。苦手なんだよしょうがない。苦手なもんはしょうがない。

 少し前に、苦手意識、というものについて考えた時期があった。たとえばある事象についてヘマばかり繰り返す奴がいるとする。そいつに「おまえそれ苦手やんなー」ということが有効かどうかについて。もしかしたら、苦手って言われたことについて腹を立てるかもしれない。そして無茶苦茶に練習して得意にしてしまうかも知れない。あるいは、これは無理だ自分には向かないと放り出してしまうかもしれない。ただ凹むだけかもしれない。そう言われたことで初めて、自分はこれが苦手なんだと気付いて(あるいはそう思い込んで)苦手意識というものを芽生えさせてしまうかも知れない。僕の論理からいうと、苦手意識って奴はマイナスなものでしかない。百害あって一利なし、なんてものはないと思っているけど、百害あって一利だけ、なんてものは世の中にいっぱいある。この全てが邪魔者だとは言い切れないけれども。答えなんて出ない。哲学っていうのはそういうもんだ。ぐじゃぐじゃ考えて、最終的に「がー、もう!」ってなるのが哲学だ。それしかない。あんな意味判らん漢字だらけの専門用語を開発するのが哲学じゃない。俺は何を言ってるんだろうか?

 確かに絶望は減ったわ。でもそれがなんだっていうの?しんどい、最悪、それが口癖だった彼女は、もう21になる。ただただ怖い、恐ろしい。今日思い付いた単語は「トラウマ製造機」と「トラウマ再生機」。俺はトラウマが怖い。色んなことに恐れを抱くことが、怖い。体が、精神が、勝手に拒否反応を起こすことが怖い。未だに恐れていることが、怖い。トラウマなんて増やしたくもないし、少なくないトラウマを穿り返されるのだって嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。と、思うことが怖い。いつから人間恐怖症になったのか。

 それでも、たまに誰かに全部話してみたくなる。俺は同情を乞うているのだろうか。




8月2日(Mon)

 久しぶり!すぎて日記上げるの緊張する。実は更新してなかった間もずっと日記は書き続けていたんだけれど、このままっていうのも考えもんなんで、やっぱりあげることに。独り善がりは長く続かないよ。

 生活過剰だ。たとえば昨日を例に挙げてみる。朝6時起床。7時からマクドでバイト。1時間の休憩を挟みつつ4時まで目一杯カウンターで働く。上がってきたらメール。「PL行こう」。こうなったら行ってやろうじゃないか。夏休みの僕は突っ込めるイベントには全て顔を出すのだよ。で、男二人でPLへ。こうなったら一番奥地まで辿り着いてやろうと、最終的にPL学園の目の前まで来る。花火のデカさが段違い。車で適当なところまで行って、とか座れるところで妥協して花火見てるやつはPLの花火を見てるとは言えないのだよ!もう二度と行かないだろうけど次は座りたいです。っていうかね、学園の前、すごい。警官かと思ったら機動隊だし。花火見てるのに肺が圧迫されて息苦しい、とか。真後ろで殴り合いの喧嘩が始まりかけてたり。「おい!ここで人倒れてんでー!」とか叫ぶ兄ちゃんがいて、数分後に機動隊に囲まれて脱出するオジちゃんがいたり。汗を1リットルくらいかいたと思う。花火はねーよく覚えてないけどね。僕あんな命賭けるほど好きじゃないんで。

 電車だったんだけど、帰りは三本ほど見逃したら帰れました。でも帰りに電話が。見ると小学校の同級生。「何?」「いまどこー?」「PL」「うわ!行ってたんか!まあいいや、今俺らまた小学校おるから来れたら来ぃーや」「行く行くー」。で、我が母校へ。この時点で夜11時過ぎ。最近ね、深夜に小学校で溜まるのが僕らのブーム。脈絡ない話をずーっとだらだらしてるだけなんだけど。昨日は逆立ちの練習とかPK戦とかやった。でも汗1リットルくらいかいた後だったから気持ち悪いわ死にそうだわ。で、解散したのが1時ごろで、そこから帰宅して風呂入って寝て、今に至る。あれ?僕晩御飯食べたか?昨日フィレオフィッシュのセットしか食ってねぇじゃんー。ってそんな感じ。やっぱり生活過剰だ。死ぐ。八月中旬ぐらいに死ぬかも。ではまたバイトに行ってきます。