1月13日(Tue) 洗ってばっかりいたら、アライグマになっちまった。別にじわじわとした変化や「まず指の背の毛がぞわぞわと…」なんて筋書きも、黒の組織に変な液体を飲まされたなんてドラマ性も何もなかった。僕は部屋の片隅に溜まっていたセーターやらジーパンやらをワシワシと洗っていて、そして、僕はアライグマだったんだ。もしかしたら今まで自分のことを人間だと勘違いしていただけなのかも知れない。赤ん坊の頃から人間達の中だけで育てられたオラウータンみたいにね。彼は自分がオラウータンだと知ったときどう思っただろう。「あいつの身体なんかおかしいな、どうしてだろう。こんな毛とか生えてないし。真っ直ぐ立ってるし。なんかすげぇ喋ってるし。てゆか皆そうじゃん!もしかして違うの私だけ?うそーん。」こんな感じ?どうでも良いよね。 兎に角、僕はそのときジーパンを(半年前に古着屋で買ったやつだ。馬鹿みたいな値段の、世で言うヴィンテージなんかじゃなくて、読みにくいブランドのタグが付いてたけど引き千切っちゃったからもうわからない)洗っていて、ふと、そう、テレビの左上に表示されてる時計を見て「もう17分か、あと3分だな」って思うみたいに多少の必然性を含んだ偶然(必然性を含んだ偶然?)の中、思い浮かんだんだ。ああ、アライグマじゃん、ってね。 僕がアライグマだと知って一番初めに何をしたと思う?自分の股間を調べたのさ。アライグマのチンチンなんて見たことなかったけれど、一応は雄みたいだった。そこにあるってことは雄だろう?ヒヨコにだってあるんだからさ。それにしてもびっくりしたよ、竿にまでびっしりと焦げ茶けた毛が生えててるんだ。静電気で埃を取る掃除用具、わかるよね、あれかと思っちゃった。ちょっと静電気発生させようとしてみたもんね。嘘だよ?股間を調べた後、色々身体に触ったり引っ張ったりしてみたんだけど、すぐに飽きちゃった。なんだかそう珍しい発見も感動もなかったんだよね。やっぱり元々アライグマだったのかな。まあアライグマはジーパンなんか買いに行きやしないとは思うけどね、一応。 そこから後は知っての通りさ。「住宅街にアライグマ現る!」ってね。ペットとして飼われていたのが逃げただの、野生化したアライグマが突然山から下りてきただの、色々言われたよ、そりゃもう。天然かとまで言われた。日本に天然のアライグマが居るかっつーの。あーもしかしたら居るのかな?知らないけど。でも普通に考えりゃすぐに絶滅するよね。だってアライグマだよ、洗っちゃうんだよ?でも一応はクマっぽいし、喧嘩は強いのかな。どう思う?さっきから僕わかんないばっかりだね。実際わかんないんだもの、仕様がないってもんだよ。喧嘩なんてしたことないしさ。でも爪とかあるし、結構いい線行くと思うんだけどなー。 えっと、どこからだ、カメラに追い回されたあたりからかな。アライグマ一匹に150人大勢だよ?大人気ないよね。まあ僕も大人なんだかどうなんだか。アライグマ年齢で言うと幾つくらいかな、なんてね。ははは。始めは逃げるのも楽しかったんだよ。わざとテレビカメラの前を横切ってみたりね。そういう時に限ってカメラマンがドジで録画ボタン押し忘れてたり、録画出来ててもピンぼけでアライグマだかうりぼーだかわかんないようなものしか撮れてなかったり。がっかりしたよ。今までテレビに出ることなんてなかったからね。チャンスだったんだ。 で、逃げるのにも飽きて、大人しくお縄に頂戴したわけ。ていうのは嘘で、お腹が空いたんだ。僕、餌の取り方なんてわかんないしさ。始めはそこらへんの小学生が学校帰りにパンを投げたりしてくれてたんだけど、朝の会かなにかで言われたんだろうね、ある日パッタリくれなくなった。それどころか、僕の方を見るなり逃げ出したり、大人を呼んで来たり。石を投げられたこともあったな。パンと水の入った器(おそらく犬用だったけれど)をくれたときは、わざわざパンを洗うパフォーマンスまでやってあげたっていうのにさ。小学生って言っても冷たいもんだよね。朝の会がなんぼのもんだよ、まったく。 そこまで話し終えて、僕は改めて彼女を見つめた。彼女は毎日この動物園に来ている。具体的に言えば、僕の檻の前に来て、毎日30分程座り込んで僕をジッと観察している。よっぽどのアライグマ好きなのかな。世の中わかんないよね、まったく。 今日も30分が過ぎようとしたとき、しかし彼女はいつもと少し違った。たすき掛けにしていたアジアンテイスト漂うポーチから、棒アイスを一本取り出したんだ。色からしてソーダ味だろう。僕はそれを見たとき、まず、今季節が冬じゃなかったら一体どうしたんだろうな、と思った。まあ確実にドロドロのデロデロだよね。でも偉いもんで、棒アイスはその姿をしっかりと保っていた。そして少しだけ周りを見渡すと、それを僕の方へ差し出したんだ。一瞬戸惑ったよ。毒入りだ、と思った。一瞬だよ。でもまあ、毒入りでもいいやと思っちゃったんだ。別に「彼女になら殺されても本望だ」とか思ったわけじゃないよ。昔からそんなとこあるんだよね、僕。退廃的って言うか、生死感っていうか。そして、僕はおずおずと、檻のパイプとパイプの間から棒アイスを受け取った。 動物園でアライグマを見たことある人なら分かると思うんだけど、アライグマの檻の中にはまさに「アライ」用のでかい水入れがあるんだよね。ステンレスのボウルを浅く広く伸ばしたみたいな感じのやつが。僕は餌を貰うといつもやる通りにその水入れの前に座り、そして棒アイスを持ったまま(今考えると、ちゃんと木の部分を器用に持ってたんだ。ここ笑うとこね)再び彼女のほうを、彼女の目を見た。わかんないよね、いつもと同じなんだよ。まったく、女の人ってのはわかんないよ。僕は彼女の目を、じっと見つめた。それが数分なのか、数時間なのかはわからない。ここの暮らしを始めてから、時間の感覚があまりないんだよ。見えるところに時計なんてないし。彼女の目は、一定の間隔で瞬きをする以外は何も変わらない。そこで僕はまたどうでも良くなっちゃったんだよね。悪い癖だよ、ほんとに。 そして、彼女の見つめる中、僕は少しだけ溶けかかっている棒アイスを水の中に漬けた。周りの溶けかかっていた部分がもやもやと透明な液体に混じっていく。そこで僕はもう一度彼女の方を見た。「これで正解?」とでも言いたげに。 彼女は、明らかに、そりゃもう千里先からでもアラスカ大陸からでも分かるくらい明らかにがっかりしていた。落胆、気だるさ、諦め。アライグマの僕が見ても分かるくらいにね。目は変わらないのに、全身から立ち上るがっかりオーラに、僕は取り返しのつかない事をしてしまったような気分がした。そしてそれは、やっぱり取り返しのつかない事だった。彼女はアジアンテイスト漂うポーチを再び定位置にたすき掛けにし、すたすたと歩いて行ったかと思うと隣りの檻との壁に隠れてすぐに見えなくなった。あれほどあの壁を、この檻を憎んだことはないね。まじな話。僕はまたひょいっと壁から顔を出したりするのかな、と期待したけれど、そんなことはなかった。在り得なかった。 ようやく棒アイスを水入れから上げることを思い付いた。アイスは、それほど溶けてはいなかった。角が若干丸くなり、輪郭がぼやけた程度だった。これがソフトクリームだったら今頃えらいことになってるだろうな、と考えながら口に含むと、始めこそ薄まったような水臭い味がしたものの、後は普通のソーダ味のアイスで。毒は入っていなかった。僕は、毒が入ってれば良かったのに、と思った。その後、これを食べ終わると人間に戻ってるかも、とか変な妄想もした。悪い癖だよ。 アイスを食べ終わり、細長くて薄っぺらい木の棒だけが残った。明日は彼女は来るのかな?と思ったけれど、たぶん来ないような気がした。これの予想は当ってない方が良かったんだけどなー。そして、なんとなく木の棒を観察しながら、あの棒アイスがガリガリ君だったら良かったのになー、と考えた。もちろん、「あたり」には毒が入ってるんだよ。 その毒を喰らって、僕は今度はなんと魚のクエになっちゃうんだ。当直の飼育委員さんがアライグマの檻でびったんびったんしてるクエを発見するところを想像して、僕は少しだけ笑った。 |
1月11日(Sun) 歯が痛い。発狂しそうなぐらい 今この瞬間、僕には何の悩みもない 歯痛に対する悩みも そういうのは、おそらく余裕なんじゃないかと思う 人間ってのは有限であって容量があるから 数マイクロ秒単位で痛みが考えをぶつ切りにして、もう、何もない 埋めてやればいいんだ 手段は問わない 間違いであっても、それが今は真実で これが消えることだけを祈って ああ、くだらねーことで悩みたい の、方が、まだ、まし 快楽安堵解放抗鬱なんかいらないから鎮痛剤を今すぐに つーか歯ぁ全部抜いてくれ でも麻酔はかけれ で キーボードを打つだけの余裕と 明日バイトか 唾出過ぎ えーと さっき何考えてたんだっけ? |
1月10日(Sat) レポート結果等のセットを学校に忘れたので休日にもかかわらず出向かなければならない模様。マンドクセ。自転車で逝ってやるこんちくしょうとヤケクソ気味に道調べてますが。 マクドスレの話。別に機密保誓約書でも書かされてんならともかく、実際行われていることを少し色を付けて喋っただけ。実際偉くなると誓約書にサインさせられるらしいです。タイマー切れたの使ってるとか、手洗いやってないとか、そんなん文句言われても困る。心配しなくても、それ食うのクルーじゃないし俺じゃないから。BSEがどうだとか衛生上の問題がとか、ジャンクフード食うやつがそんなこと考えてるとは思わなかたョー。 |
1月8日(Thu) どんな気がする?誰にも知られないってことは 転がる石のように - - - - やらなきゃならないことを、やるだけさ だからうまくいくんだよ - - - - 大人を困らせたいんだ - - - - 襲名したい 意味はわからないけど - - - - ほんとはさ ジャズが吹きたいんだ ほんとはね - - - - 進むから転ぶ 走るから疲れる 寝る子は育つ 全てを楽しめ - - - - |
1月7日(Wed) 出たふりしてる間に、寝て行ってくれ。 ブルーハープでフェイクが出来てちょっと嬉しい。まだ吹けるの蛍の光ぐらいだけどな。今日のバイトはトイザラス店まで飛ばされての仕事なのです。聞くところによると、今日はトイザラス店の店員は全くおらず、全員他店からのヘルプでの営業とか。ストライキですか?二週間以上前から予定してのストライキですか?「7日ストライキやるんでヘルプお願いしますー」って。どうなってるマクドナルド。米肉BSE問題で豪肉価格上昇してるよマクドナルド。マックリブは驚くほど作るの面倒くさい。ここしばらくベーコン1日100枚は焼いてる。 素晴らしきサイト紹介。 ■時計草 感無量。 |
1月4日(Sun) イ`。 (君の立場になれば、君が正しい) (僕の立場になれば、僕が正しい) 時間の浪費を感じる。バイトを続ける動機も、辞める動機も見当たらない。契約は四月まで。人間は、30歳でこの世の大体のことを知ってしまうそうだ。30歳まで生きて学べなかったことは、その後もわかる見込みは無いし知ったとしても大した事ではない。それがファーストフードにとっては、半年がいいとこなんだろう。バイトに関して言うならば、僕は色々やった方が良いと思いますよ。「とにかく続けること」だとか言う何も学べなかった三十路超も多々居ますが。両方を体験した者からしか、物事の本質は語られない。比べる材料が無いが故に、埋め合わせの耳クソみたいな想像力。隣りの芝は青く見える。低学年だって知ってるさ。 憂鬱でもハイでもない。ただ、薄ら眠いだけ。慢性的な睡眠欲と、1日1度しか起こらない食欲。あと歪み波みたいな性欲と。昔、ヒイキにしてるAV女優の出演作を一度に大量に手に入れて、しばらく性欲が何なんだか判らなくなったことがある。あれは、さすがに、マズかった。でも人は過ちを繰り返す。愛しかない。愛しか。 広末に!元気な子供が!産まれますように! |
1月3日(Sat) (息の仕方を知ってるなんて、奇跡だぜ) 店長が俺をSWマネージャーに仕立て上げようとしててすげぇやりにくいです。SWマネってのはバイトがなれる最高位のことdeath。社員と同格。時給制なのに。もちろんやる気も何も無いんですが、持ち前の都合の良さによってやる気の無さを感じさせない仕事っぷりなんです我ながら。すっげぇ返事とかしますから。「サンキューです!」「ういっす!」って。で、今日休憩時間に(休憩時間に!)呼び出されて説き伏せられて今月中に次のランクであるBクルーに出世するよう仰せつかりました。Bクルーになるにはポテトマスターしなきゃならないんですよね。で、ポテトってのはまあ単純に一番忙しい仕事ですよね。嫌なこったと言いたいところですが面倒なので返事は「ういっす」。更に二月末までにAクルーになれる、と。Aクルーなるのって普通一年以上かかるんですけど。なんでもありですか。とまあなんだかんだでバイトが急速に面倒になってきてる。店長居るとき限定で。 期待されると、ガッカリさせたくないからとかじゃなく単に自分の所為にされるのが嫌だからそれなりには頑張ってしまう。そんで今度は俺がガッカリする。期待ってのは、最終的には必ずどちらかを(あるいは双方を)ガッカリさせちまう。このザマだ。ファッケムオール。 |
1月2日(Fri) 「忙しいんだよ!あんたに構ってる暇なんか無いんだラフメイカー!」 「そう言うなよぉ…笑わせないと帰れないんだよぉ…」 「おまえが帰れようが帰れまいが俺が知ったことか?! そこに立っていられると邪魔なンだよ!」 「あんたの今の顔笑えるぜ、ほら、見てみなよ」 ラフメイカー、手鏡を手渡そうとする。 「こっちは今それどころじゃ…あ、はい!その件に関しましては先方のほうに通しておきましたので、はい、ありがとうございます!失礼します!」 「なあ、ほら、これ見てみなって。きっと…」 「(新人くーん!)」 「はい!今行きます!ほらちょっとそこどいて!」 (パリーン) 「んだよ!何やってんだ!ちゃんと片付けとけよ?! あ、はい!ここに居ます!」 ラフメイカー、かがんで鏡の破片を静かに一箇所に集める。 「あんた…変わったな」 その中で二番目に大きな、一番手に馴染む破片をそっと拾い上げる。 明けましておめでとうー。なんてもう言い飽きたおめでとう。まあ別に一年が終わって次の一年になっただけですが。天皇死んだわけでもあるまいしー。初夢は「額縁男」でした。あと特に言うことは無いかな。今年の初日記もこんなかんじでグデグデと。 |